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静岡地方裁判所 昭和43年(む)40号 決定 1968年3月01日

被疑者 金嬉老

決  定 <被疑者、申立人氏名略>

右被疑者に対する殺人被疑事件について、右弁護人から準抗告の申立があったので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

一、静岡地方検察庁検察官岩成重義が昭和四三年二月二九日した申立人である弁護人らに対する被疑者との接見拒否処分を取り消す。

二、弁護人らは、昭和四三年三月一日午後七時より午後八時三〇分までの間の四〇分間、および同月二日午前八時より同一一時三〇分までの間の四〇分間、いずれも被疑者がその時現在する場所で、被疑者と接見することができる。

三、申立人らのその余の申立を棄却する。

理由

本件申立の理由は、末尾添付の「準抗告の申立」と題する書面記載のとおりであるから、これを引用する。

一件資料によれば、被疑者は、殺人の被疑事実により、昭和四三年二月二四日逮捕されたところ、静岡地方検察庁所属検察官は、右被疑者に対し、右被疑事実により、同月二七日静岡地方裁判所に対し勾留請求をし、同裁判所裁判官は同日右被疑者を清水警察署に勾留した事実、被疑者と弁護人山根二郎、同角南俊輔とは同月二四日に約四五分、翌二五日に約一時間、弁護人西山正雄とは翌二六日約四五分、翌二七日約五〇分、弁護人山根二郎、同西山正雄とは同月二九日約四〇分各接見している事実が認められる。

そして、前記準抗告申立書および検察官作成の回答書によれば、弁護人西山正雄は、昭和四三年二月二九日午後四時過ごろ、静岡地方検察庁検察官岩成重義に対し、翌三月一日の接見の指定をされたい旨申立てたところ、同検事より、右二月二九日に四〇分の接見をされているから、次回の接見は捜査上の必要から三月五日または六日に指定したい旨回答された事実が認められる。以上の事実によれば、右検事の回答は、三月四日、または五日までの弁護人と被疑者との接見を拒否したものと解さざるをえないところ、本件事案の性質、態様、犯行前後の状況、被疑者の弁解の進展事情に鑑みると、逮捕以来二月二九日まで前認定のとおり被疑者と弁護人との接見がされているからといつて、三月四日または五日まで弁護人との接見を拒否することは、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するものといわなければならない。したがつて検察官の本件拒否処分は刑事訴訟法第三九条第三項但書に違反する違法な処分であるからこれを取り消し、主文第二項記載の目的、場所、時間に、接見を指定した場合、捜査に支障のあることを窺わせる事情を認めるに足る資料はないから、同項のようにこれを定め、なお弁護人の申立第二項のように、現段階で勾留の全期間を通しての接見交通の具体的日時、時間を指定することは、同法第三九条第三項本文により捜査官に捜査のため必要があるときに接見交通の指定権が認められていることに鑑み、相当ではないからこの部分を棄却し、さらに、前記検察官が弁護人らの被疑者に対する書類の授受を妨げた事実を認めるに足る資料はないから、弁護人の申立第三項はその理由がないからこれを棄却し、同法第四三二条、第四二六条により主文のとおり決定する。

(裁判官 土川孝二)

準抗告の申立

被疑者 金嬉老

右の者にかかる殺人被疑事件につき、刑事訴訟法四三〇条一項により左のとおり準抗告を申立てる。

申立の趣旨

静岡地方検察庁検察官岩成重義が昭和四三年二月二九日被疑者金嬉老と弁護人山根二郎、同角南俊輔、同西山正雄との接見を同年三月一日から三月五日まで拒否した処分を取消す。

同検察官は、被疑者金嬉老とその弁護人山根二郎、同角南俊輔、同西山正雄とに対し、昭和四三年三月一日午後四時から同日午後九時までの間に連続して少なくとも一時間、ならびに同月二日より起訴に至るまでの間毎日午前八時より同一〇時までの間に継続して少なくとも各一時間それぞれ接見させなければならない。

同検察官は右弁護人らが右被疑者に対して書類の授受をするのを妨げてはならない。

との裁判を求める。

申立の理由<省略>

(以下略)

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